おはようございます。古江です。
LGBT理解増進法が衆議院で可決されました。しかしその内容に関して付け加えられた条文が様々な場所で批判を受けています。
LGBT理解増進法の全文がなかなか検索しづらく、当初の提出案と修正案だけが書かれたページと独立していた為、私の方で問題となっている箇所をまとめてみました。赤く書かれている文字が追加された箇所となり削除された箇所はアンダーラインを引いています。
”第六条 事業主は、基本理念にのっとり、性的指向及び性同一性の多様性に関するその雇用する労働者の理解の増進に関し、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ普及啓発、就業環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより性的指向及び性同一性の多様性に関する当該労働者の理解の増進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する施策に協力するよう努めるものとする。”
この箇所が追加されたことで、家庭及び地域住民、その他から活動に対して反対の声があった場合、その活動を阻止することが出来るのではないか?と批判の声が上がっています。
”第十条 国及び地方公共団体は、前条の研究の進捗状況を踏まえつつ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解を深めることができるよう、心身の発達に応じた教育及び学習の振興並びに広報活動等を通じた性的指向及び性同一性の多様性に関する知識の着実な普及、各般の問題に対応するための相談体制の整備、民間の団体等の自発的な活動の促進その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。”
2 事業主は、その雇用する労働者に対し、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解を深めるための情報の提供、研修の実施、普及啓発、就業環境に関する相談体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
3 学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校の児童等に対し、性的指向及び性同一性の多様性に関する理解を深めるためのため、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ、教育又は啓発、教育環境に関する相談体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。”
第六条と併せて考えると、民間団体の活動の制限と各所で批判されています。これはおそらくアメリカで現在起こっている問題(保守層の強い州での18歳未満の児童に対して性自認などに関するジェンダー教育の州法的禁止)も影響しているのかと感じます。アメリカではキリスト教が主流のため、LGBT等の概念は宗教上認められない傾向にあり、保守層の票獲得のためこうした施策が行われている背景があるとおもわれます。
”第十二条 この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。”
新たに書き加えられた条項ですが、この条項が理解増進は多数派に配慮したものにしなければならない。そしてその運用指針は政府が策定する。ということで非常に批判を受けています。
色々な見方がありますが、AGSとしては性的少数者(LGBT)と世の中を構成する大多数のシスジェンダーが真に共生できる社会を作るためには、性的少数者(LGBT)の意見ばかりではなく大多数のシスジェンダー側の意見も聞かなければならないと考えています。そのため特に問題視はしていません。
総評としますと、G7のためにむりやり早期成立させた感のある内容であり、内容が非常に薄くむしろない方が良かったのでは?という声もあります。逆に理解を阻害する法であり廃案にするべきだという声もあります。
AGSとしての見解は、1つの法案として上がったことは1歩前進したことであると考えています。あくまでも理解を増進する法案なので、法的罰則があるわけではないです。しかしその効力がどうであれルール的なものが定められたことは意味があることでないでしょうか。
家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ、という文が入れられているのも、現在各所で問題となってる公共トイレのジェンダーレス化(女性用個室の減少)に歯止めをかける事にも繋がるかもしれません。性自認の偽ることでの性犯罪は日本でも起きていますし、海外では当たり前の犯罪機会論で考えた公共施設のデザインもされていない日本では、性犯罪の危険性は相当に高いものとして捉えるべきです。弱きものとして性的少数者(LGBT)をイメージしてしまいがちですが、社会で本当に守らなければならないのは、力の弱い女性と子供達です。